先日、コスモス成年後見サポートセンター奈良の勉強会で死後事務委任についての学習会がありました。
当事務所でも、死後事務委任は業務として扱っており、次のページで、具体的な方法も紹介させていただいています。
http://www.masuga.sakura.ne.jp/soga/01foraging/
ただ、この死後事務、相続手続との線引きが難しく、どこまで故人の方の意思どおりしてよいのか、受任者が判断に迷う状況も考えられます。
この点、参考になるものとして、民法があります。
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(成年被後見人の死亡後の成年後見人の権限)
第八百七十三条の二 成年後見人は、成年被後見人が死亡した場合において、必要があるときは、成年被後見人の相続人の意思に反することが明らかなときを除き、相続人が相続財産を管理することができるに至るまで、次に掲げる行為をすることができる。ただし、第三号に掲げる行為をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
一 相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為
二 相続財産に属する債務(弁済期が到来しているものに限る。)の弁済
三 その死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為(前二号に掲げる行為を除く。)
(委任の規定の準用)
第八百七十四条 第六百五十四条及び第六百五十五条の規定は、後見について準用する。
(委任の終了後の処分)
第六百五十四条 委任が終了した場合において、急迫の事情があるときは、受任者又はその相続人若しくは法定代理人は、委任者又はその相続人若しくは法定代理人が委任事務を処理することができるに至るまで、必要な処分をしなければならない。
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この法律の具体的な解釈としては、法務省のページに次のような解説があります。
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00196.html#10
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Q10 改正法により,成年後見人はどのような死後事務を行うことができるのですか。また,死後事務を行うための要件はどのようになっていますか。
A10
まず,改正法により成年後見人が行うことができるとされた死後事務は,以下の3種類です。
(1) 個々の相続財産の保存に必要な行為
(具体例)
・ 相続財産に属する債権について時効の完成が間近に迫っている場合に行う時効の中断(債務者に対する請求。民法第147条第1号)
・ 相続財産に属する建物に雨漏りがある場合にこれを修繕する行為
(2) 弁済期が到来した債務の弁済
(具体例)
・ 成年被後見人の医療費,入院費及び公共料金等の支払
(3) その死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産全体の保存に必要な行為((1)(2)に当たる行為を除く。)
(具体例)
・ 遺体の火葬に関する契約の締結
・ 成年後見人が管理していた成年被後見人所有に係る動産の寄託契約の締結(トランクルームの利用契約など)
・ 成年被後見人の居室に関する電気・ガス・水道等供給契約の解約
・ 債務を弁済するための預貯金(成年被後見人名義口座)の払戻し
次に,成年後見人が上記(1)~(3)の死後事務を行うためには,
(1)成年後見人が当該事務を行う必要があること
(2)成年被後見人の相続人が相続財産を管理することができる状態に至っていないこと
(3)成年後見人が当該事務を行うことにつき,成年被後見人の相続人の意思に反することが明らかな場合でないこと
という各要件を満たしている必要があります。
また,上記(3)の死後事務(民法第873条の2第3号)を行う場合には,上記の要件に加えて,
(4)家庭裁判所の許可
も必要となります。
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成年後見という手続に乗ったうえでの「死後事務」なので、かなり範囲が狭い印象を受けます。
当事務所でも用語には気を付けて、当事務所で扱う業務については、「死後事務等委任」と呼ぶことにしたいと思います。